事業者名  一畑電気鉄道株式会社
事例名称  上下分離方式による鉄道整備(検討会による提言)
概要
 一畑電車を採算性だけでなく「社会全体の便益」の側面から評価し、「地域の社会基盤として存続していくべき」と結論付け、存続の具体的な方法としては、「インフラ所有権を移転しない上下分離方式」が最も実効性が高いと提言。 
取組の様子
一畑電気鉄道
協力者・関係者
京都大学 大学院工学研究科助教授 中川 大
渡部公認会計士事務所 公認会計士 渡部一博
山陰中央新報社 論説委員     藤原秀晶 
中国運輸局
島根県沿線市町(松江市、出雲市、平田市、大社町)
一畑電気鉄道株式会社
背景
 地方民鉄は、利用者が減少し赤字経営を強いられているものが大半である。一畑電鉄も平成9年に自治体の支援策を盛り込んだ「一畑電車新経営改善計画(平成9〜13年度)」を策定したが、計画値との乖離が拡大する状況となった。そのため「一畑電車及び沿線公共交通確保に関する検討委員会」を設置し、一畑電車の中長期的な展望、代替交通等の可能性について検討する中で、今後の一畑電車のあり方について方向性を示すとともに、沿線の公共交通確保に向けたあり方について検討することにした。
内容
一畑電車及び沿線公共交通確保に関する検討委員会
目的:一畑電車のあり方について方向性を示すとともに、沿線の公共交通確保に向けたあり方について検討
対象路線:北松江線、大社線
期 間:平成14年11月〜平成15年10月
開催回数:4回
委 員:11名提言
(骨子)
一畑電車は地域における社会基盤として、事業者の自助努力と国・県・自治体の適切な関与によって存続していくべきである。
その新しい方向として、責任の範囲を明確化し、鉄道と地域が最大の力を発揮できるような新しい形態とすべきであり、具体的には「インフラ所有権を移転しない上下分離方式」が最も実効性が高いと考えられる。
また、実施すべき施策については、更なるサービスレベルの向上(運行本数増、スピードアップ及び運賃値下げ等)、地域との連携・協力による施策展開及び都市政策との連携強化などが挙げられる。

鉄道事業者、沿線自治体の概要
事業形態   :第一種鉄道事業者
営業キロ   :42.2km
輸送人員(平成14年度):1,432千人
主な沿線自治体及び人口(平成15年3月末):出雲市 87,100人、平田市 29,394人、松江市 148,038人、大社町 16,258人
効果
 行政・民間のいずれにおいても効率性が求められるなかにおいて、厳しい採算性と進まない利便性向上の状況から脱却し、さらに鉄道を活用していくためには、事業者と地域の明確な役割分担が確立されることが必要であり、提言に基づく新たな方式を活用していくことが期待される。
成功(失敗)理由
これまで国及び沿線自治体の支援を受けて、様々な経営支援策を施しながらも利用者の減少に歯止めがかからない状況について、一畑電車沿線地域対策協議会(島根県、松江市、出雲市、平田市、大社町)が重大な問題意識を持ち、一畑電車の存廃を含め湖北公共交通のあり方について有識者を加えて本検討会を設置し、検討をおこなったことにより、提言という形で、関係者の認識を一つにすることができたこと。
今後の課題
実施すべき施策の概要
更なるサービスレベルの向上:運行本数増、昼間時の運行間隔の改善、スピードアップ
地域との連携・協力による施策展開:マーケティング戦略、運賃施策、既存公共交通機関等との連携強化、情報技術等の活用
都市政策との連携強化:公共施設の立地をはじめとする都市政策全般において、一畑電車の利活用を図る視点
今後の課題 
本提言で鉄道として存続することを支持したのは、便益が負担を上回ると判断されるからで、負担と便益の関係を定期的に検証することが必要。
お問い合わせ先  中国運輸局